リハビリテーション・ケア合同研究大会北九州2004発表記録



OTの視点を通じた立位動作の検討
−ズボン操作に着目して−

鳴門山上病院作業療法士 佐々木寛和



【はじめに】

 
我々は、諸種のADL動作に対して、OTとしての視点を活かし患者様の「生活」をキーワードとしたリハビリテーション(以下リハと略)の展開に努めている。中でも、今回 着日した着衣動作(立位での.ズボン操作)は、羞恥心を伴う動作であることに加えて、転倒のリスクが高い活動であることから、早期の動作獲得が望まれる活動であると認識している。以上の事より、安全かつ効率的に動作を遂行するという観点から、OTとしてどのように介入すべきかについての指標を得る為、重心動揺計を用いて脳卒中患者様の立位におけるズボン操作時の圧中心を計測し検討・考察したので報告する

【対象】

 対象は、当科において入院加療中の脳卒中片麻痺患者様7名(男性4人、女性3人)平均年鈴77±7.4歳で、麻痺の内訳は右片麻痺3名、左片麻痺4名、尚、著しい高次機能障害や痴呆を有する症例は除外した。

【方法】

 測定機器は、スズケン社製kenz−Stabilo101を用いた。測定は、フォースプレート上に靴を履いた状態で立位を保持し、長ズボンの上げ下ろしを1分間の間で可能な限り実施した。それに対するOT介入前後の変化を、重心動揺の分析パラメータのうち総軌跡長、短形面積、外周面積、X軸、Y軸を用いて比較検討した。併せて動作の観察を行い、変化を分析した。統計学的処理としてt検定を用い、危険率5%以下を優位差ありとした

【結果】

 重心動揺の分析パラメータのうち、総軌跡長、短形面積、外周面積、においては優位差を認めた(p<0.05)。]・Y軸においては優位差を認めなかった。動揺中心変位は、非麻痺側に優位な傾向を示したが、OTが介入することで中心部に近づく傾向を認めた。また観察場面では、介入後はリーチ範囲が広がり麻痺側殿部の上げ下げが容易となった。

考察】

 今回の研究において、総軌跡長、短形面積、外周面積に相関関係が認められたのは、
治療として、ズボン操作に伴う重心移動を誘導しながら介入することで、非麻痺側の過剰反応が軽減し、リーチ範囲が広がりズボン操作の行動様式に変化が生じたのではないかと考える。介入前は、動揺中心変位が非麻痺側にあり固定的な姿勢を保持していたが介入後は、全身の自律的反応も観察できるようになり動揺中心変位が中心部に変位することで、効率の良い運動が促されたと考えられる。しかし、今回は、治療前・治療後のデータしか抽出出来ておらず、実際の生活場面での動作獲得が図られているかに疑問を残す。しかし、我々は、病棟における生活リハ(入浴・更衣等)への参入と併せて、モーニングリハ(早出業務)を行うことで、実際の生活時間帯に即したアプローチを展開している。よって、環境が変化することで生じる問題にも対処出来ていると考える。また、病棟で関わる関連職種に対しても、常に密な連携を図り、情報及び介護技術の共有に努めている。今後もOTの視点を通した立位動作へのアプロ−チ、検討を重ね、患者様の生活の再構築に向けた取り組みを継続していくことが我々の課題である。